肩の症状に対する一般的な改善方法は多岐に渡り、書籍やネットには情報が溢れています。複雑化する原因は “肩だけ” を相手にするからです。“肩だけに絞れは効率よく肩の症状に対応できる“と思われがちですが、全身が連携して働く人の体には逆に非効率です。どんな症状でも全身を読み解く整体による、シンプルな改善方法を解説します。
肩関節の脱臼に関しては、こちらの記事を参照して下さい。
肩こりに対する一般的な認識

イメージしやすいように、肩の症状に対しての一般的な認識を、医療系のHPより抜粋しておきます。
人間は二足歩行をするために、もともと首や腰に負担がかかりやすい。首から肩にかけての筋肉が姿勢を保つために緊張し、血行が悪くなって、重く感じるのが肩こりです。
肩こりを引き起こす主な要因としては、筋肉疲労と血行不良、末梢神経の傷などが挙げられます。
筋肉の緊張=人間の肩は重い頭と腕を支え続けている
加齢による骨や腱の衰え=頸部脊椎症、五十肩
貧血、低血圧、高血圧などの症状があるときは肩こりを起こしやすい。また、狭心症や心筋梗塞、胃潰瘍などが原因になっていることもある。
そのほか、目の病気がある、視力に合わない眼鏡をかけ続けている、歯のかみ合わせが悪い、虫歯があって片方の歯でしかものをかめない、などが原因になっている場合もありる。不安・イライラなど長く続くストレスが肩こりを誘発するともいわれています。
肩の症状の特徴
肩の症状についての記事は比較的遅めの作成となりました。その理由を含め、先ず肩の症状の特徴を挙げておきます。
肩の症状は、腰を中心に下が良い状態であれば起こらない

- 体の要である腰に支える力があれば、首や肩は安心してゆるんでいられる
- 腰の可動性が良ければ、手足に負担をかけず、ゆるんだ状態で使用できる
- どんな症状でも腰を含めて対処する整体では、肩こりは早い段階で解消される症状一つである
肩の症状は、体の問題を首から上にあげないように堰せき止めていることもある

- 肩を硬くすることで、首より下からの問題を、首から上へ波及させることを抑える
- 首や頭部を硬直から守ることもあれば、汚れた血液を脳に上げないようにすることもある
肩の症状は、心臓や腎臓とも関連が大きい

一般的にも肩の痛みは、心筋梗塞の兆候のこともあり注意が必要とされています。整体で体を読み解いてきた結果でも、肩の症状を引き起こす原因に心臓や腎臓への負担があることが解っています。更には関連があるということだけでなく、症状に至るメカニズムまで説明されていますので、このあと紹介させていただきます。
肩の症状の分類
分かりやすいように、肩の症状を以下の3つに分けて解説していきます。
- 肩こり(筋肉の張り、重苦しさ)
- 四十肩・五十肩(腕の角度や動作による痛み)
- 肩関節痛(動かさなくても痛い)
Ⅰ.肩こり
肩こりの2大原因
現代人が肩こりを引き起こす原因は、主に以下の2つになります。
- 指の酷使からくる腕の疲れ
- 食べ過ぎ
また一般的にも言われる目の酷使と肩の症状との関係ですが、整体で体を読み解くと、目の症状であっても指の酷使による影響が大きいことが解っています。つまりモニターの見過ぎより、パソコンやスマホ操作の影響が強く出ているということです。この辺りの詳細は 視力についての記事 を参照して下さい。
Ⅰ-1 指の酷使 が肩こりを引き起こす流れ

- パソコン作業やスマホ操作は、複雑な手指の筋肉を硬直させる
- その緊張や疲れは、前腕の筋肉 ➡ 上腕の筋肉 と伝わる
- 腕の疲労をカバーするために、肩周りの筋肉が疲労する
- 指先の作業時は前かがみになりやすく、背中の筋肉も硬直させる
- それにより肩甲骨も広がる
- 1~5を放置すると、肩の上部で支えることになり肩こりを発症する
Point
もちろん介護や子育て・重労働など直接腕を使う影響もありますが、パソコンが普及してからは指先作業で体を壊す人が増えました。またパソコンはあまり使用しない職場でも、仕事の細分化による影響も大きいです。
体は全身疲労よりも部分疲労の方が回復がしにくく、想像以上にダメージが蓄積します。
腕や手指の疲労と肩や体の症状との関連については 腕の疲労や使い方についての記事 を参照して下さい。
Ⅰ-2 食べ過ぎ が肩こりを引き起こす流れ

- 胃に負担が掛かると、肋骨(季肋部)が硬く張り出してくる
- 肋骨を介して、背中の(背骨を支える)筋肉を硬直させる
- 食べ過ぎの負担は、更に神経を介して胸椎6番目の骨に伝わる
- 胸椎6番の骨の脇を走る 2.の筋肉を更に硬直させる
- 直ぐ上にある僧帽筋を介して肩周りを硬直させる
Ⅱ.四十肩・五十肩(腕の角度や動作による痛み)
本来の四十肩・五十肩とは
最近では幅広い肩の症状を含めていますが、本来の四十肩・五十肩は以下の特徴がありました。

- 腕を斜め後方に伸ばした時(上着を着る動作)で痛む
- 前や横からなら、腕が普通に上がる
- 痛みは酷くならず、放っておいても、3か月~半年で症状は消失する
本来の四十肩・五十肩の原因
- 全身のバランスが崩れた影響が、肩に集中することで発症する
- 長年の負担が溜まった結果であるため、40代・50代に多くなる
- “これ以上は動かさず養生して” という体からのサイン
- 痛みにより、体全体のバランスを整えようとしている
現代の四十肩・五十肩とは
- 腕の角度に関係なく、可動制限や痛みがある状態も含められている
- 日に日に強くなる肩の痛みや、安静にしていても治まらない痛みも含まれている
- このあと紹介する “肩関節痛” との境が、無くなってきている
Ⅲ.肩関節痛
前述したように、現代の解釈では四十肩・五十肩もこの流れに含められていると言えます。

- Ⅰ‐1項で流れを示したように、指や腕の酷使により肩回りの筋肉が硬直してくる
- この状態にストレスや猛暑によるダメージが加わると、肩が前下に引っ張られ、肋骨も下がった状態で固定される
- それにより肩の動作が妨げられ、肩の可動域が狭められて腕も上がらなくなる
- 肩が前に落ちた姿勢は、胸骨や脇の下に負担をかける
- これらには老廃物を流す大きなリンパ節や血管が通っており、負担が掛かると流れが悪くなり、肩関節内に老廃物や石灰物質が溜まって痛みとなる
Point
特に石灰物質による痛みは、夜寝ている間に強くなり、朝方目が覚めてしまうことも多いです。その理由は、睡眠の役割にあります。人は寝ている間に昼間に働いて疲労した部分を弛めようとしますが、それにより弛みきらない部分の症状が際立ってしまうのです。
また血流が少なくなっていることで、寒い季節は他よりも冷えが入りやすいことも影響しています。
肩の症状に対してやってはいけないこと
揉み返しの意味
一般的にもよく “揉み返しがきて…” なんて言いますが、揉み返しとはどういうことでなのでしょうか。

- “生きている体” は刺激に対して、必ず反応を起こす
- よって揉まれれば、反発して逆に硬くなろうとする
- いくら揉む強さやテンポを変化させても、避けられない
“肩たたき” も、肩を余計に硬くさせる

- “生きている体” は繰り返す刺激に対して、防御反応を起こす
- 肩たたきでは、体が “次の一打” に身構えることで硬直する
- 弱く叩いたり、テンポを変化させても避けられない
Point
常に相手の命と向き合っている整体では、揉んだり叩いたりするという発想にはなりません。なぜなら揉んだり叩いたりすれば柔らかくなるだろうという発想は、命のない物にしか当てはまらないからです。特に人の体は繊細であり、扇風機の風を当てるだけでも硬直を起こします。例え複雑な首振り機能や風の強さが変わる揺らぎモードであっても、硬直を避けることは出来ません。
このような 本物の整体 の考え方については こちらの記事 を参照して下さい。
冷やすのは良くない

一般的には急性期には冷やすことも勧めていますが、熱中症による酷い炎症など特殊な場合を除き、冷やすことは勧められません。通常の炎症であれば、このあと紹介する方法で改善できます。
肩の症状の改善方法
“蒸しタオル法” で、あらゆる肩の症状を改善させる

- 少し熱いと感じるくらいの蒸しタオルを、痛い側の肩に直接当てるだけの簡単な方法
- 磁石や電気の力、温湿布や赤外線などで血流を増やしても、当てている間しか効果が無く、その効果も体の順応反応で無くなってくる
- 蒸しタオル法では、タオルが冷めていくのに対し、体が増えた血流を維持しようする
- 酷い炎症でなければ、蒸しタオルによる熱が炎症も吸い取ってくれる
Point
つまり蒸しタオル法では、体が自ら弛み血流を増やそうとする力を呼び起こすことができるということです。このように簡単で効果が高い技術ですが、やり方を間違えると効果が半減したり殆ど無くなってしまうこともあります。初めての方は一度 蒸しタオルについての記事 を読んでおいて下さい。
部分浴法の一つ “肘湯” で、あらゆる肩の症状を改善させる

- 一般的にも入浴により肩の症状が改善すると言っているものもあるが
- どんな技術も、的を絞った方が効果が高い
- 肩の症状であれば、“肘湯” がそれに当たる
- 肘湯は肩の痛みの原因である、肺(肋骨)や心臓(循環器)まで弛めることができる
Point
蒸しタオル法と違い部分浴法は、症状のある個所を直接お湯に浸けるわけではありません。“冷めていく刺激” が高い効果を生む蒸しタオル法に対し、血流を介して熱刺激を与えることが部分浴法の強みだからです。
一つ注意点があり、他の部分浴や全身浴、蒸しタオル法との併用では互いの効果を打ち消し合ってしまいます。最低でも3時間以上はあける必要があります。
“肩の一点に力を集める体操” や “椎骨体操” で、指や腕の酷使による肩こりを改善させる
最近の書籍には載っていない体操なのですが、整体と出会った当時の筆者がとても感動し、印象の強い体操です。本の解説では肩関節の脱臼予防の項で紹介されていますが、肩の症状にも効果があります。何より整体の奥深さを実感できる体操ですので、一度やってみることをおすすめします。

Point
肩の一点に力を集める体操については 肩関節の脱臼についての記事 で解説しています。
この体操と似た体操で “肩こり体操” という体操がありましたが、最近では “椎骨体操” と名前が変わりました。椎骨を辿って腕を上げていくので、肩こりの改善だけで血液の病気や様々な症状が改善されることから改名されました。椎骨体操については こちらの記事 で解説しています。
複合体操で食べ過ぎによる肩こりを改善させる

食べ過ぎが原因の肩こりでは、複合体操を行うと効果が早く、且つ食べ過ぎが原因の他の症状も含めてスムーズに改善できます。手順は こちらの記事 で解説しています。複合体操とはその名の通り “食べすぎ体操” と “リンパ体操” という二つの体操を合わせたものです。リンパの流れも良くなるので、四十肩・五十肩や石灰性の肩関節痛など、一通りの肩の症状に効果があります。
重ね重ねの体操で肩関節痛を改善させる

開いた肩甲骨を内に寄せ、肋骨を弛める体操です。猛暑やストレスによるダメージが多く、呼吸器や心臓に負担の多い現代人に適した体操の一つです。よって肩の症状だけでなく、現代人のあらゆる問題に対応できます。手順は こちらの記事 で解説しています。
肩の体操で、肩関節の可動性を高める

両側同時に行っても、痛い側だけでも、やりやすい方で大丈夫です。また腰が入り安定しやすいように膝立ちで行うとしていますが、慣れてくれば仕事の合間など立位でも可能です。
- 膝立ちになり、脚は肩幅、両足を近づけることで安定させる
- 腕は体の横に下ろした状態から、親指を立てて軽く握る
- 脇を軽く締めたまま肘を曲げてきて、親指を肩口にあてる
- 肘を前からゆっくりと、引っ掛かるまで上げていく
(肘を広げるとどこまでも軽く上がってしまうので、肩幅より広げないように注意) - 親指を軸に、肘を引っ掛かるまで開いていく
- 肘を軸に(肘を止めて)腕をゆっくり伸ばしていく
- 伸びきったら、人差し指から順に指をゆっくり開いていく
- 指を全て開いたら、手首を外側、内側に捻りながら、肩に一番力が集まる角度を探す
- 見つけたら、その角度で指先方向に腕を伸ばし、その力をポンと抜く
(ポンと抜くとき腕が下がらないように注意しながら、2~3回繰り返す) - できるだけ後ろ側から回すように、腕を下ろしていく
- 引っ掛かったところで2~3呼吸キープしてから、力を抜く
Point
整体体操には、各体操に共通したポイントや注意点があります。初めての方は一度 整体体操についての記事 を参照しておいて下さい。
まとめとおすすめの書籍
まとめ
- 本来肩の症状は、肩こり、四十肩・五十肩、肩関節痛 と別れていたが、一般的な見方や猛暑やストレスによる現代人の弱体化により境が曖昧になっている
- 本来の肩こりの主な原因は、指や腕の酷使と食べ過ぎである
- 本来の四十肩・五十肩の原因は、全身のバランスが崩れた影響が肩に集中し、その疲労が長年溜まった結果である
- 肩こりや四十肩・五十肩の状態が続いたり、猛暑やストレスによる負担が加わることで、肩回りの血流やリンパの流れが悪くなると、肩関節痛を発症する
- 肩の症状に対し、揉む・叩く・冷やすのは良くない理由を解説しました
- 肩の症状の改善方法として、蒸しタオル法と肘湯を紹介しました
- 肩こりの改善方法として、肩の一点に力を集める体操と複合体操を紹介しました
- 肩関節痛の改善方法として、重ね重ねの体操を紹介しました
おすすめの書籍
整体法5 わかりやすい肩の講座!
丸ごと肩について解説している書籍で、記事で紹介した “肩の一点に力を集める体操” が解説されている唯一の本です。2009年発刊と古めなので新品での購入は難しいかもしれません。最近の本のように分かりやすいイラストなどは無いですが、その分とても内容が濃いです。肩について学びたいという方以外は、最近の書籍の方が読みやすいと思いますが、とにかく貴重なことが沢山書かれています。
痛みと不調を自分で治す人体力学
こちらの書籍では、肩の症状にもある程度触れながら、その他あらゆる不調や症状の原因から改善方法まで解説されています。記事で紹介した椎骨体操も解説されています。不調や症状が起きた時のために、ぜひ手元に置いておきたい一冊です。




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