現代の日本人の不調の2大原因は “猛暑” と “食べ過ぎ” ですが、その後に続くのが “腕の疲労” や “ストレス” になります。それらの中でも、体の不調との関連を想像しにくい “腕の疲労”。 この記事を読めば、力仕事に限らず “腕の疲労” で体を壊す人が多い理由、体を守る腕の使い方、改善方法などを知ることができます。
腕の疲労は大きく2つに分けられる
“腕の疲労” が原因で体を壊すと言われても、整体を知っている人でなければイメージしにくいのではないでしょうか。力仕事?育児?肩こりのこと?・・・。少しずつ整理するために、先ずは原因を大きく2つにわけてみます。
① 腕を使い過ぎたことによる疲労




通常最初に思い浮かぶのは、こちらかと思います。例えば、、、
- 引っ越し屋さんや建築現場など、シンプルに力を使う肉体労働
- 保育士や介護職員など、腕を使うことが多い仕事
- 育児や子育て、自宅で家族への介護
- 畑を耕したり、重い収穫物を運ぶことが多い農業
など、腕が疲れるのも、明確ではないながらもそれが原因で体調を崩していそうなのも、比較的理解しやすいものかと思います。腕の疲労がどのように体に影響していくかは、このあと解説していきます。
② 指先を使う細かい作業を繰り返すことによる疲労
高度成長期に入ると、仕事の機械化も急激に進み、腕や全身を使った疲労や負担は減りました。その代わりに増加しているのが、指先を使うような細かな動作を、長時間繰り返し続けることで蓄積される疲労です。実は体の一部分を使う動作や、繰り返しの作業による負担の方が、体にとってずっと厄介です。



- モノづくりの効率化のために、作業の細分化のより増えた、ライン工のような仕事
- もはやプログラマーに限られず、あらゆる仕事で多用されるパソコン作業
- 現代では多くの人が毎日長時間使用する、スマートフォンや携帯端末の操作
このようにパソコン作業による負担は、一般的になかなか問題となりませんでしたが、スマートフォンの普及による負担はあちこちで問題視されていると思います。しかしどちらかと言えばパソコンの時と同じように、画面を見過ぎることが問題とされていることがほとんどです。根本は腕の疲労にあることを含めて、このあと解説していきます。
腕の疲労による体への影響
腕の疲労による体への影響は、非常に多岐に渡るため、詳細は症状ごとにまとめた記事にゆずります(今後も少しずつ記事を増やしていく予定です)。ここでは簡単にまとめて紹介しておきます。

Point
腕の疲労による影響が多岐に渡る原因の一つに、腕と呼吸器(肺や肋骨)の関係にあります。
- 腕の疲労は、腕を支える肩甲骨や鎖骨・肋骨に影響する
- 肋骨などが硬直を起こすと、肺の収縮不良や心臓の圧迫が発生する
- また腕と神経的につながりのある背骨の下には、肺や心臓と神経的につながる椎骨があり影響する
そして呼吸器の働き低下から、全身に波及していきます。
手指の症状や変形であっても 中心側で腕を支えられなくなってから生じる

- スマホの使い過ぎなどで手指に変形や症状を起こした場合、一般的には単純に同じ負荷が掛かり続けた結果とします
- しかし人の体はそれほど単純でもなければ、刺激に対して何の策も講じないことはない
- 手指の酷使も、体の中心で支えられている内は手指に症状は生じない
- 腕を支える肩などが耐えきれず、痛みなどのSOSを出している段階で対処していれば、手指まで流れることもない
- 何もせず、いつの間にか肩の痛みも治まり、忘れたころに手指の症状や変形が現れる
Point
つまり手指に問題が生じている場合、その前に肩や肘などの症状を経由してきているということです。これはとても大切なことであり、手指の症状があるからと、いくら手指を揉んだり捻ったりしても良くならないのはその為です。なぜなら大元の原因である肩回りや椎骨が改善しないと、そこから波及し続けるからです。
しかし体は便利なもので、体の中心を意識しながら手指の調整を行うことで、勝手に大元の原因まで改善してくれます。そしてそこまで含めて設計されているのが、記事で紹介している “整体体操” です。このような体のつながりを無視して、手指の症状だけを手術などで取り除いてしまうと、根本まで含めた改善はとても難しくなります。
腕の酷使による影響は、男女で全く異なる
腕の疲労への対処法や腕の使い方に入る前に、先ず知っておく必要があることがあります。それが性別による腕の酷使への対応力の違いです。
赤ちゃんの “快適な巣” の役割を持つ女性の骨盤は 負荷に強いつくりにはなっていない
男女で大きく異なる特徴を持つ部位の一つに、骨盤があります。そしてその違いが、そのまま腕の酷使への耐性にも関係しています。
- 男性は力仕事に耐えうるように、骨盤はガッシリと衝撃に強いようになっている
- 女性はおなかで赤ちゃんが快適に過ごせるように、可動性のあるつくりになっている
- 女性の骨盤は、可動性がある分、衝撃で壊れたり、負荷により歪みを生じやすい
また骨盤への負担は、物理的なものだけでなく、精神的なストレスも含まれます。女性の社会進出が叫ばれてきましたが、何千年ものあいだ営まれてきた体の働きには殆ど目を向けられていないのが現実です。そのツケが近年の女性の不調と大きくかかわっていることは想像に難しくありません。
骨盤を大切に扱えば、女性は大きく人生が好転します。詳細は 骨盤についての記事 を参照して下さい。
育児の間は 女性の腕の疲労への耐性力がアップする

- 赤ちゃんに母乳をあげると、乳腺の出口である胸椎3番目の骨がゆるむ
- するとその上にある腕の疲労や眠りと関係する骨も、連動してゆるんでいく
- つまり母乳をあげる行為が、長時間抱っこや短時間睡眠に強くなるように設計されているということである
この辺りの詳細は 授乳についての記事 を参照して下さい。
体を壊さない、腕の使い方のヒント
手で体を整えるプロ(施術者)でも ほとんどの人は腕の負担から体を壊している
- マッサージや整体、整骨、カイロプラクティックなどの施術を行うことが、想像以上に腕を酷使することもあるが、
- 近年は施術者の体を守るために、腕の使い方もかなり考えらているのにもかかわらず、
- ほとんどの施術者が、腕の負担から体を壊します
Point
つまり体のプロであるにもかかわらず、負担を防ぐことが難しいのが、腕の問題ということです。
しかし本物の整体であれば、腕の使い方が施術者本人とっても死活問題であり、そもそもそういう腕の使い方ができなければ真の効果が出ないことを知っています。もちろん施術を極めるほどの腕の使い方をマスターするのは困難ですが、何十年も前から腕の使い方を極められてきた知恵の一端を少し紹介できたらと思います。
理想的な腕の使い方のヒントは 女性の施術者にある
- 前述したように、腕の負担に対する対応力は圧倒的に男性の方が大きいのにもかかわらず
- 施術の世界では、男性が短命、女性は元気に長生きする人が多い
- その原因は、男性は下手に力がある分、腕の力だけで施術を行ってしまう点にある
- ただし女性が非力だからと、ただ力を抜くだけでは、効果が全く出ないだけである
- ポイントは “腰を中心にからだ全体を使う” ことである
腰を中心にからだ全体を使って作業を行うコツ
力を使う対象に密着する
- 例えば車いすからベッドに移動させるときは、相手に密着するほど腕の力を使わない
- 体を起こさせるとき、一人で歩けない人を横から支えながら歩くときなども同様
- パソコン操作や手指作業でも、脇が閉じた状態の方が、負担が少ない
- 患者さんをストレッチャーからベッドへ移すときや、重い荷物を引っ張るときも脇が閉じるように密着して行うようにする
下半身の位置も近づけることで 腰が伸びた状態で行う


- 例え対象と密着しても、腰の力が抜けていたら(反りが無ければ)、ほとんど効果がない
- そのためには力士のように下半身を鍛えていない限り、上半身だけでなく下半身も近づけることが大切である
- 相手を背中側から抱えて立たせるときや、低い位置の思い物を持ち上げるときも、足の位置を近づけて、腰も低い位置まで下ろして行う
斜に構え 体を捻じった状態で行うと腰が使える

- 綱引きや押し相撲で分かるように、体は捻じると安定して使える
- 体の捻じりを使うには、どちからの足を前に出すのが簡単である
- 斜に構えて密着することで、ベッドから車イスなどの回転移動も楽になる
自分の体重を使う

綱引きや、重い荷物を引っ張るときなどは、無意識に体重を使うと思います。以下のようにそれほど大きな力を使わない作業時にも、体重を上手く使うことで、負担を軽減させることができます。
- 介護で体を起こすとき、立たせるとき、仰向けから横向きにさせるとき
- 患者さんをストレッチャーからベッドへ移すとき
- 荷物を滑らせて移動させるとき
Point
筆者が以前働いていた環境では、施設の問題もあり、重い扉を頻繁に開け閉めする必要がありました。そんな中、女性では体を壊すことが多かったのですが、観察していると腕の力だけで開けています。そこで体重をかけて扉を開けることを教えると、体の不調が一気に改善しました。
肩が腰のアーチに乗っていると 腕や手指を楽に使える

かなり簡素化した見方ですが、一般的にはシンプルに考えていただいて大丈夫かと思います。パソコン作業を例に挙げると以下のようになります。
- 椅子に座って腰を軽く伸ばし
- 猫背気味の人なら、肩を前から回して、腰に乗せるイメージで後ろから下ろす
- その状態で、机と肘の高さが大きく異なるなら調整をする
技術の進歩で軽量化の一歩を辿るスマートフォンであっても、負担に注意する


- なるべく手で持たず、置いて使う
- あるいはスマホを持つ手ごと、何かで支える
- 持って使う時は、脇を締め、持つ手や持ち方を定期的に変える
Point
上で解説したパソコン作業のときと同様、肩を腰のアーチに乗せた状態で操作することも大切です。
もう少しだけ突っ込んだ体の使い方
ここまではある程度、一般的にも言われることがある内容かと思います。このブログは整体の技術や知恵について紹介するものなので、もう少しだけ深く解説しておきます。
具体的には、全身を使うと言っても、大切なのは腰です。つまり腕を使う作業に、いかに腰を参加させるかがポイントということです。
普段から腕を使った体操で 腕と腰の連携を高めておく

このブログでは、さまざまな症状に対する対処法を紹介しています。その際にほぼ必ず紹介しているのが “整体体操” なのですが、この整体体操には以下のような特徴があります。
- 整体体操は、体の力学に沿って設計されている
- 一般的にも体の “要” とも言われ、力学的に見ても動きの中心となるのは “腰” である
- よって全ての整体体操は、腰とのつながりの中で行われるものである
Point
つまり、上半身や首から上の症状で使用する体操 = 腕を使う体操 であれば、おのずと腕と腰の連携力も上がるということです。その中でいくつか紹介しておきます。
下半身が安定しない場合は 足裏の3点を意識する

車いすからベッドへの介助時など、上記方法でも安定しない場合は、下半身の問題で腰が使えないこともあります。その場合は、踏ん張るときに足裏の逆三角形の頂点を意識すると安定させることができます。
腰が使いにくい時は 普段から “腰を強くする体操” で腰の弾力を取り戻す

名前は “腰を強くする体操” ですが、強い腰とは背筋などの筋肉が強いことではありません。適度なアーチを持ち、一つ一つの椎骨に可動性があり、全体として弾力のある状態が、整体的な “強い腰” になります。腰を強くする体操の手順は こちらの記事 で解説しています。
手指や手首 肘など腕の症状や変形の改善方法
“重ね重ねの体操” や “大胸筋をゆるめる体操” で改善させる

腕と腰の連携を強める方法のところでも紹介しましたが、腕の症状や変形などに対しては “重ね重ねの体操” が推奨されます。腕の症状の多くには肩甲骨の異常が関係しており、重ね重ねの体操は肩甲骨をゆるめて正常な状態に戻す効果があるからです。
ただし親指や、肘や腕の親指側に症状や変形があるときは、鎖骨や大胸筋など体の前側に問題があります。その場合は “大胸筋をゆるめる体操” の方が効果が得られます。
肘湯で改善させる

肘から先を熱湯に浸けることで、症状の改善だけでなく、呼吸器(肺や肋骨)から肩回りまでゆるめる効果があります。
温度や終えるタイミング、注意事項などありますので、初めての方は こちらの記事 で解説していますので一度目を通しておいてください。
蒸しタオル法で改善させる



蒸しタオル法も、症状のある個所にあてるだけで、原因の箇所まで刺激が流れて、勝手に根本まで改善されます。
このように手順が簡単にもかかわらず、非常に効果が高い技術になりますが、やり方を間違えると効果が半減したり、ほとんど無くなってしまうこともあります。なのでこちらの技術についても、初めての方は 蒸しタオル法についての記事 を一度参照して下さい。
まとめとおすすめの書籍
まとめ
- 体の不調につながる腕の疲労は、力仕事などによる腕の疲労と、パソコン作業などによる手指の酷使による疲労と、大きく2つに分けられる
- 例えばパソコン作業による目の症状にも、手指の酷使による負担からの影響が大きい
- 例えスマートフォンの長時間使用による手指の変形であっても、先ず手指の酷使のダメージが腕から肩回りや脊椎に波及し、それから手指に流れて生じる
- 男性は腕の酷使にも耐性があるが、なまじ腕力に頼るため、施術者では男性の方が短命である
- 体の使い方が上手な女性は施術者でも長く元気に働けるが、単純に腕力を使うと大きく体を壊す
- 腕を酷使する介護や保育、建設現場などで体を壊さないためのポイントは、腰を連携させて腕を使うことである
- 腰を参加させるには、下半身も含め、対象と近い位置で作業することが大切である
- 腰の力を引き出すには、体を斜に構え、立って行う作業では足裏の3点を意識すると良い
- パソコンやスマートフォンを使用するときは、軽く腰を伸ばし、腰のアーチに肩を乗せた状態で行うと疲労が抑えられる
- 普段から腕を使った整体体操をしていると、腕と腰の連携が自然と使えるようになる
- そもそも腰が使いにくいときは、腰を強くする体操で弾力のある腰をつくっておく
- 肘や手首、手指の症状や変形がある場合の改善方法として、重ね重ねの体操と大胸筋をゆるめる体操を紹介しました
- 同じく肘湯と、蒸しタオル法を紹介しました。
おすすめの書籍
- 痛みと不調を自分で治す人体力学
記事を書くにあたって主に参考にした書籍であり、記事で紹介した体操の多くも解説されています。他にもからだの色々な症状の原因や改善方法が解説されています。比較的発刊が新しくイラストや写真も豊富で分かりやすいのもあり、手元に置いておく1冊としてもおすすめです。 - 失われた体の力がよみがえる 免疫力学
こちらは記事で紹介した “大胸筋をゆるめる体操” が載っている書籍です。また免疫力を上げることや免疫の働きを正常に保つことが間違いなく重要となるこれからの時代、ぜひ手に取って欲しい一冊でもあります。 - 介護に役立つ人体力学
介護職だけではなく看護師さんやご家族の方など、介護の現場で腕を酷使する人は多いです。またこの書籍で紹介されている技術は、介護だけではなく、保育の現場や子育て、重いものを扱う仕事、スポーツなど幅広い分野で活用できます。




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