一般的には主に外傷が引き金となり、そのとき関節周囲が損傷するとくせになると言われている肩関節脱臼ですが、整体で体を読み解くとそもそも脱臼を起こしやすい状態になっていることが解ります。よって修復の仕方もその体の状態に沿って行えば痛みもなく、体の状態を調整すればくせも改善されます。解説していきます。

外傷による脱臼の場合は、骨折を伴っていることもあります。熟練者であれば対応可能ですが、その場合は整復するだけでなく、再発しないように力の無い周囲の筋肉に力を戻し、更には一時的に通常より硬くさせることでギプスの役割を持たせるところまで行うからです。そこまで行える施術者はごく一部です。よって脱臼が疑われる場合は、原則医療機関を受診していただくようお願いします。以上を了承いただけた方のみ、読み進めて下さい。
脱臼に対する一般的な認識

イメージしやすいように、ネットで調べると上位に出てくるサイトから一般的な認識や対処法を抜粋しておきます。
肩関節脱臼とは、肩の関節に過剰な力が加わったことによって、肩の骨の位置が正常な位置から、ずれてしまっている状態のことです。
肩は体の中でも特に脱臼を起こしやすい部位です。脱臼したときには激しい痛みを伴い、回復までに時間がかかるケースが多くあります。
肩関節脱臼は、発症原因によって2つに分けられます。1つは転倒やスポーツでのけがといったアクシデントがきっかけで発症する“外傷性脱臼”、もう1つは一度脱臼したために肩関節が脱臼しやすい状態になってしまい、その後も日常生活で繰り返し脱臼を起こしてしまう“反復性脱臼”です。
反復性脱臼になる主な原因は、関節の受け皿のふちにある“関節唇”という線維性の軟骨が受け皿からはがれてしまうことによります。この部位は、肩関節を安定させる役割を担っているため、関節唇が損傷を受けることで、肩関節が不安定になり、繰り返し脱臼を起こしてしまうのです。
整復後の治療方法は2通りあります。手術を行う“手術療法”と、腕の固定やリハビリテーションで回復を図る“保存療法”です。
“保存療法をしたが、ちゃんと元どおりの肩の強度に戻れなかった”、“脱臼を繰り返し起こしてしまうようになった”という方などには、手術によってバンカート損傷を修復していく必要があります。
肩関節脱臼の原因(整体的認識)
転ぶのにも理由がある

- 整体では転んだことよりも、なぜ転んだのかをみていく
- 具体的には、転びやすい体になっているので、それをみていく
外傷で脱臼するのにも理由がある

- 脱臼により、骨折を避けている
- 脱臼や骨折により、首から上へ衝撃が波及するのを避けている
Point
整体で体を読み解くと、体にとって最も怖いのは、骨折でも病気でもなく打撲です。打撲の影響は体の奥まで響き、定期的に出てきて悪さをします。特に怖いのは生命維持にかかわる大切な器官がある頭部への影響です。なので手を突いたときには、肩が外れたり、鎖骨が折れやすくなっています。詳しくは 打撲についての記事 を参照して下さい。
脱臼しやすい、脱臼がくせになるのにも理由がある

- 強い衝撃でなくても脱臼するのは、脱臼しやすい体になっていると言える
- 脱臼がくせになるのも、一度脱臼したからなりやすくなるというより、元々そういう体だったということ
(ただし外れたまま放置していたり、強引に整復したことでより外れやすくなることはある) - 野球やテニスなど腕の動作での脱臼も、動作が激しすぎたのではなく、元々限界が低い状態だったと言える
肩を脱臼しやすい体とは


- 肩は腕を全方向に自由に動かせるように、浅い関節になっている
- 浅くても外れないのは、周囲を強靭な筋肉で覆っているからである
- この筋肉群の一部に、硬直した筋肉や弱くなった筋肉があると、肩が外れやすくなる
脱臼を起こすメカニズムを実感してみましょう

- どちらかの手のひらで、逆側の大胸筋を押さえる
(指先を腕の付け根、手根は鎖骨下辺りを手のひら全体で押さえる) - その状態で逆の腕で、野球の投球フォームやテニスのサーブ動作をする
- すると途中で引っかかって、腕が上がらなく(振りかぶれなく)なる
Point
そのように大胸筋の硬直が動きを邪魔している状態で腕を振り上げることで、浅い関節である肩は容易に外れてしまいます。
大胸筋は腕の急所であり、腕をよく使うスポーツはもちろん、パソコン作業やスマホ操作でも硬くなります。また大胸筋は睡眠の急所でもあるので、硬くなると睡眠の質も低下します。するとますます腕の疲労も抜けなくなり、硬直も強くなります。
こんな原因でも、脱臼しやすい肩になる
脱臼しにくい体に戻す方法
“肩の一点に力を集める体操” で改善させる

最近の書籍には載っていない体操なのですが、整体と出会った当時の筆者がとても感動し、印象の強い体操です。最近の書籍とは異なり、写真も最低限で分かりやすいイラストもないのですが、しっかりと実感できました。
- 腰幅で立ち、軽く腰を反らす(上半身はわずかに前傾姿勢)
- 脇に下げた両手のひらを向き合わせたまま、ゆっくり前から上げていく
【途中で 引っ掛かりや腕が重くなるポイント(以降 引重P)が無いか確認しながら上げていき、上がらなくなったらそこで終了しゆっくり腕を下ろす】 - 腕を体の横に戻し、次は手のひら上向きで同じように行う
- 最後に手のひら下向きで行う
- 一番引重Pが強かったり多かった手のひらの向きで、再び上げていく
- 最初の引重Pにきたら、腕を開いていき、一番強い引重Pを探す
- その角度で腕を固定し、今度は手のひらの向きを変えながら、一番強い引重Pを探す
- その角度で手首を固定し、指を色々な角度に変えながら、一番強い引重Pを探す
- そこで左右交互に、腕を小さく伸ばす(体が捻じれず、肩が引かれるくらい)
- 指を戻しながら5.の手のひらの向きに戻し、腕を閉じていく(高さは変えない)
- 正面まで戻したら、再び腕を上げていく(6~9で弛んだので上がりやすくなっている)
- 再び引重Pがあったら、6~10を行う
- 上がらない所まできたら、姿勢(軽く腰が反った状態)を崩さずに腕を下ろしていく
- 腕が下まで下りたら、そこで初めて体を楽にする
Point
複雑な肩周りの筋肉から肩こりの原因となっている筋肉を見つけ出して弛める体操ですが、結果的に背骨も整うのであらゆる症状改善も期待できます。
文章にすると手順が多く煩雑に感じるかもしれませんが、動作の繰り返しも多く、見た目よりシンプルです。更に一度行えば 自分が負担を掛けやすい筋肉=引重Pが分かるので、1~4などある程度動作を省略できます。
この体操のすごいところは、MRIなど手間とコストをかけて複雑な肩の筋肉の中からダメージを受けている箇所を探し出し、さらに治療やリハビリに通ったり場合によっては手術までするという作業を、たった一つの体操で1~2分で完結させてしまうことです。更に利点はそれだけにとどまりません。肩に負担を掛かるのは本来腰で支えるべきものを肩で補っているからなのですが、13.14.動作により肩に負担を掛けた力を腰に戻すことで、根本から改善させることが出来ます。
胸骨体操で予防する

自由に肩を動かせるのは、上腕骨・肩甲骨・鎖骨が関節でつながることで肩をつくっており、それらの状態が良いからです。何らかの原因でそれらの一部に異常が生じると、バランスが崩れ肩の動きにも制限がかかります。このような状態を改善する方法として “胸骨体操” があります。
Point
現代は呼吸器の時代と言われ、呼吸器(肺や肋骨)を弛めることが、肩の脱臼はもちろん様々な症状の予防にもなるため、覚えておいて欲しい体操です。手順については こちらの記事 で紹介しています。
蒸しタオル法で改善させる

肩から硬くなった大胸筋にかけて、蒸しタオルを当てます。蒸しタオル法であれば、複雑な関節や筋肉であっても、勝手に必要な箇所を弛めることが出来ます。また原因が離れたところにあっても、熱の刺激がそちらまで改善してくれます。
Point
脱臼による内出血や炎症が激しい場合を除き、副作用もありません(軽い炎症であれば、蒸しタオルの熱で吸い取ってくれる)。
このように簡便で効果の高い技術ですが、やり方を間違えると効果が半減したり、ほとんど無くなってしまうこともあります。初めての方は一度 蒸しタオルについての記事 を参照しておいて下さい。
まとめとおすすめの書籍
まとめ
- 脱臼を起こすのは、周囲の筋肉に、弱い部分や硬直した部分があるためである
- 腕を自由に動かすために浅い関節である方は、その状態で手を突くことで容易に外れてしまう
- それ以前に、転んだりよろけること自体、そのような体の状態になっている
- 指や腕の使い過ぎによる大胸筋の硬直、猛暑のダメージや食べ過ぎ、ストレスなどによる肋骨の硬直により肩が引っ張られた状態で、スポーツで腕を振り上げるなどすると外れてしまう
- 以上のように、脱臼がくせになるのも、最初の脱臼が原因ではなく、初めからそのような体であったためである
- 改善・方法として、肩の一点に力を集める体操、胸骨体操、蒸しタオル法を紹介しました
おすすめの書籍
整体法5 わかりやすい肩の講座!
一冊丸ごと肩について解説している書籍で、記事で紹介した “肩の一点に力を集める体操” が解説されている唯一の本です。新品での購入は難しいかもしれません。最近の本のように分かりやすいイラストなどはありませんが、その分とても内容が濃いです。肩についてしっかり学びたい人以外は新しい書籍の方が良いかもしれませんが、とにかく貴重なことが沢山書かれています。
失われた体の力がよみがえる 免疫力学
こちらは記事で紹介した胸骨体操が解説されています。最近の発刊なので、分かりやすいイラストなども豊富でイメージしやすい書籍です。この先も重要となる免疫関連を中心に、様々な不調や症状の原因から改善方法まで解説されています。ぜひ手元に置いておきたい一冊です。





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